名古屋市の分譲マンションの特徴・動向について

不動産鑑定士 山本高大


  従来型の中高層分譲マンションにおいては、区分所有者の権利割合が建物の専有面積割合に応じて管理規約及び登記にて共有持分や敷地利用権割合が明記配分されるケースが多い。
  しかし、昨今の超高層分譲マンションにおいては、高層へ進むほど区分マンションの経済価値が増大する傾向が強いため、前述の専有面積割合にて配分するだけでは、各所有者の経済価値を充分に反映しているとは言い難い。また現状の経済情勢において、特に東京を除く都市部(大阪、名古屋など)では商業需要が盛り上がらない傾向から業務施設床(事務所・店舗等)の売却処分等に苦慮しており、従後床価格が業務施設床より高層分譲マンション床の方が高く時価の観点から逆転しているケースもあり、故に高層分譲マンション床の権利配分方法が保留床と権利床との調整において注目されている状況にある。
  従来通りの再開発における権利変換計画では、高層階は建築費を控除した土地費が黒字となり、低層階では当該土地費が赤字(つまり土地費が出てこない)となるケースが出てしまう可能性がある。また将来的に当該高層分譲マンションが建て替え時期にさしかかった場合には、単に専有面積割合で権利変換調整したとしても、高層階権利者と低層階権利者との権利価値の整合性をとれない問題が生ずるおそれがある。
  そこで本稿では、都市再開発事業における超高層分譲マンションの経済価値(権利割合)を適正に反映させる場合の権利価値配分を考察する。


1. 配分率の考え方
  区分所有マンションの経済価値には元来階層別効用差及び位置別効用差が認められる。一棟の建物において階層及び同一階層内の位置により、快適性等による効用差が認められる場合には、これら効用差によって本件区分所有権の価格等に差異が生じるものである。不動産鑑定理論上、これらの効用差は、取引事例比較法の比準価格や収益還元法の収益価格を求める際にも考慮されるが、一般的には不動産の費用性に着目した原価法における積算価格を求める際の配分(いわゆる原価配分)に考慮される。当該鑑定理論上考えられている配分率は以下の2つが考えられている。

(1)階層別位置別効用比率に基づく配分率
  この方法は、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格をもつことから、効用差は建物と土地とが一体となって発生したものであり、効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映させるべきであるという考え方に基づくものである。ここでいう配分率は、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域等に存する構造・規模・用途等が類似する一棟全体の建物及びその敷地の実質賃料・分譲価格等を基礎として、区分所有建物の存する一棟全体の建物及びその敷地の階層別効用比及び位置別効用比を求め、これに専有面積を加味して求めた階層別・位置別効用比率をいう。
  当該鑑定理論上において、一般的に分譲マンションのような一棟の建物全体が単一の用途に供されている場合に多く採用されている手法と考えられている。

(2)地価配分率に基づく方法
  この方法は、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格を持つことを前提としながらも、建物の使用資材や設備、仕様等が異なることにより建築費等に差異が認められる場合を除き、効用差を敷地利用権価格のみに反映させるべきであるという考え方に基づくものである。当該配分率は上記(1)から求めた階層別効用比及び位置別効用比から、建物に帰属する効用比を控除して土地の効用比(地価配分比)を求め、これに専有面積を加味して求めた階層別・位置別地価配分率のことをいい、敷地全体の価格に当該地価配分率を乗じて土地価格を求めようとするものである。(建物の場合は、建物建築費全体に通常専有面積比か建築コスト比による配分率を乗じて区分所有権の対象となる建物価格を求める)。
  当該鑑定理論上において、一般的に多目的ビル等のように階層による用途が異なり、その用途ごとに内外装等の資材、仕様が異なることによりその建築費等に差異が認められる場合に適した手法であるとされる。

  以上から鑑みると、用途別(住居、店舗、駐車場)の価値配分は(2)「地価配分率に基づく方法」の考え方が合理的であると考える。これは用途が異なり、それに伴い建物の使用資材や設備、仕様等が異なることにより建築費等に差異が明確に認められるためであるからと考える。他方、同一用途である住居用部分(本件居住用分譲マンション)の内部の価値配分において考える場合は、鑑定理論上(1)「階層別位置別効用比率に基づく配分率」の配分の考え方が合理的であるものと考える。



2. 不動産鑑定理論と都市再開発法における配分率との整合性
  本件超高層分譲マンションの場合、前述の1−(1)の考え方に基づくと、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格をもつことから、効用差は建物と土地とが一体となって発生したものであり、効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映させるべきであるという考え方が妥当性を有するものと思料する。しかし一方で、都市再開発法における配分を考えた場合(都市再開発法施行令付録第四)、不動産鑑定理論上との整合性をどのように捉えていくかが必要となる。

各戸床の効用比配分率の考え方は主に以下の3つが考えられる。


(1)土地・建物との階層別(位置別)効用比率と同率とする場合
 居住用分譲マンションの各階(又は位置)用途の同質性を前提に、土地・建物の価値総額割合を基礎として維持しつつ、上下層階及び角中間住戸の効用比に差を設ける方法。

(2)建物価格を各階一定とした場合
 建物価格(建築費)比は上下層階及び角中間住戸に差がなく一定とし、効用比は全て地価で差を設ける方法。

(3)土地価格を各階一定とした場合
 土地価格比は上下層階及び角中間住戸に差がなく一定とし、効用比は全て建物価格(建築費)で差を設ける方法。


  同一用途である居住用分譲マンションの場合、上記(1)から(3)の考え方のいずれを採用するかは建築計画等によりケースバイケースである。しかし当該鑑定理論における考え方からすれば、効用差は建物と土地とが一体となって発生したものであり、効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映させるべきであるとするため、上記(1)「土地・建物とも階層別効用比率と同率とした場合」の考え方がもっとも整合性を有するものと思料する。昨今の20Fを超えるような超高層マンションを考えた場合、仮に(2)・(3)の考え方を採用すると、土地・建物価格どちらかを一定とすれば低層階に行くほど、土地・建物どちらかが価格割れ(又は原価割れ)を起こす恐れがあり合理的ではないと思料する。
  上記(1)の考え方を採用した場合、当該鑑定理論でいう効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映することに合致するのと同時に、土地・建物価格(又は原価)を総額割合で配分すれば、個々の専有部分(共用部分の使用も前提)に帰属する効用比に伴い土地・建物(又は原価)を価値配分したとしても、各配分後の個別の土地・建物価格(又は原価)を再び合算すれば総額に一致し、かつ各効用比の比例バランスをも崩さないものと考える。また、建築費の面を考えた場合でも、一般的に分譲マンションにおいては同一用途で仕様等も概ね類似していることを前提としているため、低層階・高層階、中間位置・角位置において建築コストが部分的に大きく変化することはなく、むしろ全戸全般的に建築費が平均して反映しているものと考える。さらに、専有面積比のみに基づき建物価格を配分する方法も考えられるが、昨今の超高層分譲マンションタイプの場合、高層階における眺望等の価値プレミアムを専有面積比だけでは反映しきれず価値の不均衡をもたらす問題を内包する。故に、建物においても、土地総額と建物総額との相関を基準として、建物価格比を上下層階・角中間住戸に効用に応じた割合配分することは十分合理性を有するものと考える。


  したがって、昨今のような超高層分譲マンションの権利配分を考えた場合、上記(1)に基づき、下記図のとおり、土地・建物価格(又は原価)の総額割合を前提維持しつつ、階層別・位置別効用比率に応じて土地・建物比率として権利配分していくことが妥当な方法であると考える。         

      
 



以  上