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2018.11.30

固定資産税

時点修正(2)

3.計算方法・精度

 市町村によって、時点修正率や時点修正後価格の計算には様々な方法がある。そのため、同じ価格が基となっていても、計算方法や精度の違いにより結果が異なってくる。

 以下にその方法の一部を例示する。市町村によっては、ここに示す以外の方法を採用している可能性があることに留意して頂きたい。

※以下、令和3基準年度の例で説明

(1) 時点修正率の計算方法

 1年半(R3.7.1時点)の時点修正率、2年半(R4.7.1時点)の時点修正率は、計算方法及び計算の丸め処理によって結果に誤差が生じる。

 

【1】 1年半時点修正率

     0.92×0.91=0.8372≒0.84(小数第三位四捨五入)

                  0.83(小数第三位切り捨て)

【2】 2年半時点修正率

 方法A) 半年×1年×1年

     0.92×0.91×0.95=0.79534≒0.80(小数第三位四捨五入)

                                                        0.79(小数第三位切り捨て)

 方法B) 1年半×1年

   【1】の丸め処理が四捨五入の場合

     0.84×0.95=0.798≒0.80(小数第三位四捨五入)

   【1】の丸め処理が切り捨ての場合

     0.83×0.95=0.7885≒0.78(小数第三位切り捨て)

※2年半時点修正率は、1年半時点修正率のように単に端数処理の問題だけではなく、計算方法自体の問題が含まれることに留意が必要である。

(2) 時点修正後価格の計算方法

 時点修正後価格について、丸め処理のタイミングや回数、時点修正率の適用の仕方によって結果に誤差が生じる。なお、ここでは価格の丸め処理を全て上3桁有効切り捨てとし、時点修正率は小数第三位切り捨てで丸め処理を行ったものを用いる。

【1】 半年後価格

 価格調査基準日(R2.1.1時点)の価格に半年分の時点修正率を乗じる。価格調査基準日の価格と時点修正率は共に与えられているので、この段階では誤差は生じない。

    224,000×0.92=206,080≒206,000

【2】 1年半後価格

 以下のA)とB)の計算方法の違いにより、結果に誤差が生じる。

 方法A) 価格調査基準日の価格に1年半の時点修正率(半年×1年を丸め処理したもの)を乗じる。

    224,000×0.83=185,920≒185,000

 方法B) 【1】で算出した半年後価格に1年分の時点修正率を乗じる。

    206,000×0.91=187,460≒187,000

【3】 2年半後価格

 以下のC)とD)の計算方法及び計算精度の違いにより、結果に誤差が生じる。

 方法C) 価格調査基準日の価格に2年半の時点修正率を乗じる。

    a) 2年半の時点修正率 = 半年 × 1年 × 1年 を丸め処理したもの

      224,000×0.79=176,960≒176,000

    b) 2年半の時点修正率 = 1年半 × 1年 を丸め処理したもの

      224,000×0.78=174,720≒174,000

 方法D) 【2】で算出した1年半後価格に1年分の時点修正率を乗じる。

    c) 1年半後価格 = 方法A)の価格

      185,000×0.95=175,750≒175,000

    d) 1年半後価格 = 方法B)の価格

      187,000×0.95=177,650≒177,000

4.留意点

  • 時点修正の方法及び計算は市町村により千差万別である。そもそも時点修正を適用するかどうかについても、市町村長の判断に委ねられているため、必ず行わなければならない作業ではない。
  • 時点修正率の適用区分は、用途地区ごとを基本としている。しかし、用途地区単位であると、地価変動を適切に反映するには時点修正率の適用範囲が広すぎる場合がある。例えば、同じ普通住宅地区であっても、区画整理・開発が行われた価格水準が高い地域と古くからの既成住宅であり価格水準が低い地域がある。このような場合、時点修正率を一律に適用することが不適当と判断された時には、用途地区単位ではなく適用範囲を詳細に区分することが必要となる。 
  • 地価の下落局面において、前ページ「2.時点修正の方法」の(1)用途地区、(2)複数の状況類似地域をまとめたグループで時点修正を行う場合、一部の地域の下落要因のために、他の地域に地価の下落以上の時点修正率を適用してしまう可能性に注意しなければならない。なぜならば、時点修正後価格を下げすぎた時、次回の評価替え時に地価変動を上回る評価額の上昇が生じてしまう恐れがあるためである。
  • 用途地区や状況類似地域境において、適用する時点修正率の違いにより路線価の価格バランスを崩す可能性がある。例えば、商業地区と住宅地区の間で絶妙な価格バランスが保たれている状況において、住宅地区よりも下落幅が大きい時点修正率を商業地区に適用する場合である。

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